書籍

中井久夫と
考える患者シリーズ

中井久夫:監修解説 中井久夫と考える患者シリーズ全4巻

全4巻 四六判(128×188ミリ)上製 256頁  各巻定価 (本体2500円+税)

本書ができるまで/森越まや(本文より)


本シリーズは、統合失調症を深く探究した精神科医中井久夫先生(以下中井)の著作を、患者と医療者がともに読み、新しい統合失調症像をつくりだしていく試みです。

本書の原点は、2005年、精神科病院のデイケアで作りはじめた一冊の本にさかのぼります。「病の体験を言葉にして力に変えよう」という思いのもとに、患者、医療者が病院の図書室に集まりました。(中略)編集会議は、突然の病に途方に暮れながらも、ともに心を見つめ、世界を見つめ、その先の道を模索するものでした。出来上がった本に回復の象徴である笑いを掲げて「シナプスの笑い」と名付けました。最初は小さな活動でしたが、投稿作品を募集すると全国から声が寄せられるようになり、これを「仕事」にすべく、2008年、株式会社ラグーナ出版を設立しました。現在、約30名の患者とともに出版、製本業務を行っています。
(略)
中井は、「精神には自然回復力がある」とし、「本来統合失調症は、治りにくい病気ではなく、回復を妨害する要因が多い病気である」と書いています。私は現場で迷うとき、自然回復力を妨げないためにどのような治療が必要で、どのような治療は不要かについて考えました。そして、症状に目をとらわれずその人自身と向き合うこと、医師としてのみならず人としてどうあるべきかを(中井から)学んだのです。 いつしか私は、ラグーナ出版で働く統合失調症の患者とともに中井の著作を読みはじめました。「病気の前よりもよくなることを目指す」などの治療目標は患者の腑に落ち、日々を生きるための確かな力となったことを実感しています。 本書の”考える患者”の一人は、「病気を説明する本はたくさんあるのに、病気になったときにどうすればよいか、これからどうなるのかを教えてくれる本がなかった。だからこそ役に立つ本をつくりたい」と語りました。
(略)
編集を終えて、ある”考える患者”は、「多くの人がこの本を手に取って発病を未然に防ぎ、統合失調症を正しく理解してほしいと願うばかりです」と語りました。

中井久夫と考える患者シリーズ1 統合失調症をたどる


精神科医・中井久夫と患者の共同作業
まったく新しい統合失調症の手引書

「どんな統合失調症患者も百パーセント統合失調症的ではない」
中井久夫は、日本を代表する統合失調症研究者であり、常に患者と向き合い「希望を処方」してきた。「統合失調症は治りにくい病気ではなく回復を妨害する要因が多い病気である。本人と家族と医療陣の三者の呼吸が合わなければ、この病気の治療は第一歩からつまずく」と中井はいう。

本シリーズは、患者、家族、支援者が統合失調症を理解し、ともに回復を目指すものであり、中井の膨大な著作から言葉を厳選して、患者の側から読み解き、中井自身が新たな解説を加える。

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中井久夫と考える患者シリーズ2 統合失調症をほどく


中井久夫と考える患者が読み解く
“症状と治療(対処)”に焦点をあてた統合失調症の手引書、第2弾!

統合失調症の経過と回復への希望をたどった第1巻『統合失調症をたどる』に続く、中井久夫のテキストを考える患者たちが読み解くシリーズ第2巻。

本書では、統合失調症の経過から症状へと視点を移し、統合失調症の診断の手がかりとなるさまざまな症状を丁寧に取り上げた。各種症状への具体的な対処について、考える患者たちが中井の治療アプローチの原則をふまえて自らの体験をもとに考えを深め、患者たちを縛る特徴的な症状をほどく鍵を見出していく。

あまり語られることのない統合失調症の奥深い体験の深淵を中井と患者がともにたどり、新たな光のもとに症状を照らしだす。

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中井久夫と考える患者シリーズ3 統合失調症は癒える


中井久夫と考える患者が読み解く”治療と治療関係”に焦点をあてた統合失調症の手引書、第3弾!

第1巻『統合失調症をたどる』第2巻『統合失調症をほどく』に続き、中井久夫のテキストを”考える患者たち”が読み解くシリーズ第3巻。

中井は、「自然治癒力への信頼と自己尊厳の回復」こそが治療を貫いてもっとも必要なものと考え、回復過程では、患者の自己尊厳を確立し、「心のうぶ毛」とも言うべき患者の感受性を大事にした。患者とその家族の心理を鋭く深く洞察した言葉は、治療に信頼と希望を与え続けている。

治療者として患者に向き合う真摯な姿勢からはじまって、初診時、急性期、入院時、薬を処方する時、ゆとりを失っている時、回復途上にある時など、さまざまな場面において、どのような配慮と言葉が患者とその家族に響き、共同作業として相互信頼に基づく治療関係を築いてゆけるのか。

治療と治療関係をテーマに、回復と希望へ導く言葉を中井と患者が一緒に探っていく。

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中井久夫と考える患者シリーズ4 統合失調症と暮らす


中井久夫と考える患者が読み解く、病を得て”世に棲む””働く””暮らす”意味を見つめ、信頼と希望の灯をともすシリーズ最終巻!

中井久夫のテキストを”考える患者たち”が読み解くシリーズ最終4巻。第1巻で病気の経過をたどり、第2巻で症状を読みほどき、第3巻で治療・治癒を探った深淵な考察のまなざしが、社会に身を置いて生きる意味へと向けられる。

患者の”社会復帰”のあり方として最も重要なことは、一般的な社会通念に縛られることなく、自由な探索行動に基づくひそやかな居場所を見つけ、「世に棲む」ことであると中井は考える。巧みな少数者としての生き方を選択することで患者は安定して社会にその座を占めることができるのであり、豊富な臨床経験を通して得た知見から描かれるその植物的様相は説得力に富む。画一的ではなく、さまざまな方向へらせんのようにひっそりと根を伸ばすような生き方があることを教えてくれる。
「働く」ことは患者にとっても周囲にとっても重い課題となりうるが、患者の治ろうとする意志と治療を受ける権利の尊重を最優先に置くことを訴える。周囲の圧力と自らの焦りから、休息も取らずに全力を出して病状を悪化させる患者も多いなか、「治療という大仕事」を既におこなっていることを尊重し、消費活動も含めたコミュニケーション活動の一環として生産活動を捉える懐の深さが肝要であると説く。心身の余裕と生活の基盤づくりがあって初めて患者は「世に棲む」人となり、安定した生産活動がおこなえるようになる。

以上のような中井の思索を踏まえ、考える患者たち自らがその体験を語り、中井の設定した問いに考察を加えてゆく。その過程を通して、患者の抱える苦悩と、信頼と希望へ導く中井の治療思想体系が浮き彫りにされる。 歴史や文化の幅広い知識を背景に広く社会全体に目配りしたうえで、患者の持つ「心のうぶげ」を大事にし、拙速を戒め、ゆるやかな自然回復へと促す「養生」を要諦とした中井の治療思想は、変革期を迎えつつある現代の社会を導く道標ともなる。

重要論文「世に棲む患者」「働く患者」に加え、中井の思索と臨床の原点となった44の問い「統合失調症における主要な問題点」、養生という治療思想について語った講演録「精神科の病と養生」など本書初掲載を収録。
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著者・監修者


中井 久夫
1934年奈良県年生まれ。
京都大学医学部卒業。神戸大学名誉教授。精神科医。
精神医療の臨床、研究に携わるばかりでなく、文学、詩、絵本の翻訳、エッセイなどの文筆家としても知られる。1985年芸術療法学会賞、1989年読売文学賞(翻訳研究賞)、1991年ギリシャ国文学翻訳賞、1996年毎日出版文化賞を受賞。また阪神淡路大震災時のメンタルヘルスケアの功績などにより、2013年文化功労者に選ばれた。
著書に、『分裂病と人類』(東京大学出版会、1982,2013)、『精神科治療の覚書』(日本評論社、1982,2014)、『治療文化論』(岩波書店、1990)、『看護のための精神医学』(山口直彦共著、医学書院、2001)、『いじめのある世界に生きる君たちへ』(中央公論新社、2016)ほか、『中井久夫著作集―精神医学の経験』全6巻別巻2(岩崎学術出版社、1984—91)、『中井久夫集』全11巻(みすず書房、2017~刊行中)、『中井久夫と考える患者シリーズ』全4巻(ラグーナ出版、2015~2018)など多数。

考える患者たち
ラグーナ出版編集部で働く、統合失調症のある患者たち。
統合失調症のある6名の患者。東瀬戸サダエ、有川、ウナム、エピンビ、緒田士郎、星礼菜。

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