追悼 中井久夫先生

中井久夫先生が2022年8月8日にご逝去されました。
時空を超えた思想家、知の巨人でありながら、精神科医としては一人ひとりに向き合う臨床を導かれました。
私は精神科医となってから、ほとんどの日々を中井先生の本を拠りどころとしてたどり、私自身がどれほど救われたか言葉に尽くせません。

あの日の先生の表情を思い出します。
先生に勇気を振り絞って「患者たちと本をつくりませんか」と伝えると、「患者さんのお墨付きがもらえるんだね」と微笑まれ、ラグーナのみんなを「考える患者」と命名された。
そして穏やかに、「私たちは、統合失調症の概念を作り変えなくてはなりません。
概念とは雲のように流れてきて形を変えるものですから」と語られた。
五年がかりとなった「中井久夫と考える患者シリーズ」の一歩一歩を、先生は私たちとともに喜んでくださったと思います。

中井先生とお別れの日は、雲がとても低く、今にも手が届きそうでした。
これからは嬉しいときも困ったときも、いつでもどこでも雲を見上げて、先生を思うだろう。
本づくりばかりでなく、ラグーナの土台そのものが中井先生の教えに貫かれています。
これからも、先生が残してくださった言葉を導きの糸として、先生の「心の平和」を世界中に広げるために、みんなで力を合わせて歩んでいきます。

中井久夫先生、ほんとうにありがとうございました。
これからも私たちと共に生きて、見守っていてください。

(森越まや)

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