シナプスの笑い 創刊号

シナプスの笑い 創刊号

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当事者の視点から当事者の言葉で「体験知」として精神障がいの事象を発信することを目指して、雑誌「シナプスの笑い」が創刊されました。 幻覚・幻聴の数多の霊との戦いを綴る「霊界大戦」、精神病院の何気ない日常を描く「たぎり」の連載が始まります。座談会では「精神病からの回復」と「退院の仕方」をテーマに医師・看護師・臨床心理士も交えて意見交換しました。

「医療の現場から」では、SST(社会生活技能訓練)についてわかりやすく解説し、実際の流れを掲載しました。共感、敬意、ユーモアをキーワードに、対人関係のリハビリが展開されます。

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A5判(148×210ミリ)
128頁
定価 (本体476円+税)
ISBN 1883-0374
2006年3月1日発行

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https://lagunajapan.official.ec/items/38597142

電子書籍版(Amazon Kindle)はこちら
https://www.amazon.co.jp/dp/B081VB4BX4/

雑誌「シナプスの笑い」ができるまで

この雑誌は現在の編集長である竜人氏との出会いから始まった。竜人氏との出会いは、平成十七年の二月、精神科病院の喫煙所だった。昼ご飯の後一服していると、当時入院中の竜人氏が通りかかった。こんにちはと声を掛けたが返事はない。背中を丸めて黙々と歩いていった。しばらくするとまた彼が通りかかる。今度は少し大きな声でこんにちはと言ってみた。彼ははっとしたように我に返り、小声でこんにちはと呟いた。散歩ですかと聞くと、困ったように顔を赤らめ、黙々と去っていった。そしてその後も彼は旧棟の周りを黙々と背中を丸めて歩き続けた。

竜人氏に得体の知れない影を感じた私は、彼をSST(生活技能訓練:対人関係を学ぶ訓練)に誘った。彼は医療の発想ではついていけない数々の発想を披露してくれ、会を笑いに包んでくれた。幻聴?大丈夫。僕が作った幻聴がとれるヘルメットをかぶせてあげるから、と。

退院前、何気なく、何をしたい、と問うと、自分の中で起こっていることを世間に伝えたい、どうしてこんなことが起こるのか研究したい、といつになく真剣な表情で答えた。私はその言葉に何かひっかかるものを感じた。

平成十七年八月の暑い日、病院の図書室で本誌掲載の『霊界大戦』を読んだ。すごい小説(フィクション)だねえと感想を述べた。私が読む様子を横で心配そうに眺めていた彼は、その言葉を聞いて真顔になり、いえ違います、ノンフィクションです、ときっぱりそう言った。私ははっとなり、今度は竜人氏になったつもりでもう一度文章を読み返した。自分を操る声、迫られる究極の二者選択、自殺未遂、全世界を背負った戦い、度重なる悪霊の攻撃・・・。

これはホラー映画どころじゃない、生きた心地がしない、この時私ははじめて気付いた。散歩の時に起こっていたのはこういうことだったのか、これが彼にとっての「現実」だったのか、と。


雑誌作りはここから始まった。

二人から始まった出版会議には、入院中に作品を読ませてくれた詩のウナム氏などが加わり、連載作品が決定した。精神科治療に関する文章は、新里邦夫、森越まや、両精神科医に依頼し、快く引き受けて戴いた。投稿作品には、入院中の方、口コミで集った方の協力を得て、イラスト、エッセイ、小説、和歌、歌詞と個性的な作品が集った。

雑誌のタイトルでは、「統合失笑症」「シナプスの笑い」「無限地獄」が最後まで争った。話は次第に各人がもつ精神病のイメージや偏見、病気の感じ方、死生観など、雑誌の枠を超えて、新たな活動を起こそうという大きなうねりへと変わっていった。この雑誌の販売のために任意団体「精神をつなぐ・ラグーナ」を設立。ラグーナとは、イタリアではヴェネツィアに浮かぶ島々の総称である。旅行中、島々が放つ強烈な個性に感動し、後に現地の方から、昔これらの島々は大陸としてつながっていたと聞き、静かな興奮を覚えた。つながりと個別性の両面を失うことがないようにという願いを込めて名づけた。

雑誌のコンセプトは、当事者の視点から当事者の言葉で今世紀も「精神しょうがい」と呼ばれるであろう現象を世間に伝えることである。いまだ原因が解明されていないこの病気の特殊性を伝えるには当事者の「体験としての知」が不可欠である。

フーコーは闇に排除された言葉に耳を傾けて歴史に新たな視座を切り開いた。これまで闇に葬られてきた生き方、言葉を照射することで、新たな光を、新たな生き方を感じることができないだろうか。

この雑誌は、新しい見方を喚起する言葉に満ちている。

投稿作品解説

作品名:「霊界大戦」

私は精神科病院に入院し統合失調症と診断され、幻聴と戦っていた。その時の様子を病院の中でメモに書いていた。入院中、現ラグーナ社長と会って、そのメモを見せたら本にしようという話になった。

この世で一番の地獄が書かれていると思う。悪魔との戦いが生々しい。主人公の私はエクソシストを超えているかもしれないと何となく読み返して思う。圧倒される生命の力が描かれている。私のその後を運命づけた作品だ。その時の体験があって今の私がいる。

作品名:「金網の向こう」 「欠けたハート」 「精神科病棟」 「夕暮れ」 「少年の言葉」

入院中に詩を書いていた。最初はアイディアをノートに書いておこうと思っていたが、入院のもてあました時間に修正を加え、完成形に近づいていった。最初は恋心を書いていたが、入院が長引くにつれ書くことがなくなってきた。そこで、精神病については書いてはいけないと思っていたが書いてしまった。それから自分の心の支えとして、ライフスタイルの提案めいた詩を書くこともあった。『シナプスの笑い』では初めは自分の詩を発表できるとうれしいばかりだった。

金網の向こう』は、入院中、精神科病院の生活に慣れてほっと心に余裕がでてきた頃の詩。詩の中の『欠けたハート』は、薬を飲んで物事を忘れたりするくせがついた人と接して、自分もそうじゃないかと疑って書いた。

『精神科病棟』も入院中に書いた。これは早く退院したいという気持ちと、このままずっと入院しなければならないんだというあきらめの気持ちのなかで書きました。一粒の米にもすがる思いでした。

『夕暮れ』も病院で書いた。何も知らなかった子供の頃をうらやんだりなつかしく思ったり、大人の社会はきびしいと気付いて書いた。『少年の言葉』も病院で書いた。生きる喜びを表現している。入院中はつらいけど、退院できれば楽になる、と思いつつ書いた。

時間がたつにつれ「誰かが同じ詩を発表しているのではないか」と思った。それは、あまりにも簡単に詩の形になるし、簡単にアイディアを思いつくからだ。しかし、ほかの人の作品を調べるようなことはしなかった。そして、「新しい作品」と耳にするたびにおびえてしまう。僕は誰も自分の詩と同じ詩を書いていないと確認するために、「新しい作品」を発表している。最近は同じ詩を書かないように哲学の本をアイディアのもととするようにしている。それでも「新しい作品」と聞くとおびえてしまう。

目 次

絵画:シャワーと二つの光のゲート/戦慄(Marr)/保護室からの風景/枯葉(坂本ミツエ) 創刊によせて(森越まや) 序文(竜人) 雑誌ができるまで

第Ⅰ部 連載作品 詩:金網の向こう/精神科病棟/夕暮れ/少年の言葉 (ウナム) 小説:「霊界大戦」(竜人)/「たぎり」(島原保)/「だらだら坂の向こう側」(幸梅則) エッセイ:ミーちゃん/共に歩んだ愛犬コロ/視線恐怖症とつきあって三十五年/回りをみればみんな変/おっぱい星人(日記より)(田中研一)

第Ⅱ部 特集 座談会:精神病からの回復
回復するってどんなこと?/How to 退院

第Ⅲ部 投稿作品 歌詞:とわの島のサクラ/マクトゥの心の島のキラメキ/サトウキビ/今年未来の雪(香深マクトゥ) 短歌:春/母/生きる(田辺宥秀) 俳句:卯月/文月/師走/睦月(池ノ上弘) エッセイ:寄り道(T・M)
短編小説:少年とおじさん(ウナム)

第Ⅳ部 医療の現場から
薬物療法について(新里邦夫)/SSTについて-Q&A-(川畑善博)/SSTの現場/『SST服薬自己管理モジュールテキスト-抜粋-』服薬をやめようかなと思った時に(新里邦夫)